当センターのセンター長である坂野が編集に携わり、副センター長の中村も執筆陣として参加した「心の健康教育ハンドブック」が出版されました。
　厚生労働省が実施している患者調査によると、気分障害の患者数は平成20年に100万人を超え、今もその状態が続いています。気分の問題を抱えている人たちが如何に多いかがわかります。子どもたちに目を向けると、文部科学省が令和2年に公表した資料によれば、令和元年度に不登校が理由で小中学校を30日以上欠席した児童生徒数は約18万人で、過去最多数を更新しました。
　本書では、その随所に、こうした心身の健康に関するさまざまな基礎資料が紹介されていますが、そうした資料を見ると、身体の健康のみならず、こころの健康にかかわるさまざまな問題解決を図ること、そして、こころの健康の維持と増進を図ることが現代社会の大きな課題になっていることがわかります。また、普段から、こころの健康の維持増進を図る方策を考え、心身の健康にまつわるさまざまな問題が発生することを予防することができるような活動を行うことも大切です。
　本書はその第Ⅰ部で、心の健康教育が必要とされる社会的背景を探るとともに、心の健康教育の各論をまとめた第Ⅱ部では、10のテーマにわたって心の健康教育の具体的な取り組み方や着眼点がまとめられています。分担執筆者はいずれも斯界の第一線で活躍されている研究者かつ実践家であり、充実した内容がコンパクトにまとまられています。こころの問題解決とこころの健康の維持増進を考える時にとても役に立つ書物だと言えるでしょう。